「侵略」を明示せぬマスコミ(本多勝一)
週刊金曜日HPより引用、2006年10月20号 P7風速計 本多勝一
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侵略という実体をゴマ化して「戦争」に置きかえている多くのマスメディアに対し、「『戦争』というマスコミ用語にだまされてはならない」と題して批判したのは1972年だった(注)。冒頭がこう書きだされている――
「戦争に反対する。戦争が悪の根源である。戦争をなくそう。二度と戦争にならないように。息子を戦争に狩りだされまい……。
こういった表現が、いまの日本の良心的市民のあいだで、何の疑問もなく使われています」
これを書いてから34年。侵略に抵抗した結果が日中戦争なのだが、日本の情況はほとんど変らない。むしろ悪化しているだろう。小泉純一郎といった浅薄・軽佻・暗愚のかたまりが、この5年間にそれを急進させた。自衛隊をイラクに派兵して憲法を粉砕し、靖国神社参拝をくりかえして日本の孤立化を招いた。
で、今度の安倍晋三首相だ。本誌先週号で三氏が評したとおりだが、問題は、こんな男を首相に選びだす民度にある。同じ敗戦国ドイツと比べても、その差は歴然としている。
さらに、この問題の背景をみれば、そんな民度を育てた側にこそ「問題の根源」があることも容易に理解されよう。育てた側には自民党政権の教科書政策をはじめ多々あるものの、最大の影響力は新聞やNHKなどのマスメディアにある。
今度の北京訪問で、中国側首脳と会談したさい、安倍氏は靖国神社参拝に自粛を求められた。ところが安倍氏は言を左右して明言を避けた。「世論」がこれを大問題にしないのも、そのようにマスメディアが育てた結果であろう。
安倍氏の北京訪問の10日前まで、私は南京を訪問していた。南京大虐殺記念館はいま、改増築工事中だ。新館は従来の3倍規模になる。
来年は日本軍の南京攻略・占領の70周年にあたる。新館建立はその記念行事でもある。侵略の実相がどれほど悲惨なものだったかは、すでに拙著『南京大虐殺』(朝日新聞社=著作集第23巻)などで報告したが、安倍氏は私の著書などもちろん読んでいないだろう。侵略の実態に無知なままの北京訪問で、侵略の一象徴としての靖国神社問題にまともな応答などできるはずもあるまい。恥をさらしただけである。
<注>初出は三省堂『戦争の不条理』の巻頭文。のちに拙著『事実とは何か』(朝日文庫)に収録。
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引用終わり。「戦争」を使うと実態が見えなくなる。マスコミや政府の用語には注意せねば。当ブログも戦争に置き替わる言葉を勉強しよう。


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