侵略戦争の事実を次の世代に伝えるために

2025年9月15日

南京大虐殺 日本人への告発、南京大虐殺の真相を明らかにする全国連絡会編 東方出版
下記P64 南京事件の概要と研究状況 藤原彰 より引用。
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日本は、かつての戦争がアジア、とりわけ中国に対する侵略戦争であったという事実、その中で日本軍を残虐行為を大規模に展開したという事実、それを次代に伝えようとしていない。それをきちんと総括して反省していないのであります。
 これは、ヨーロッパの同じ敗戦国であるドイツの場合と非常に違うところであります。なぜなんでしょうか。それは、侵略戦争と残虐行為の最大の責任者が戦後も生き続けたからです。
 東京裁判は確かに日本の侵略戦争を罪としました。そして、その責任者として、二十三人の被告に有罪を宣告し、七人を絞首刑にしました。しかし、それで済んでしまった。ですから日本の戦争を引き起こしたそのものの体制の罪を問わなかった。最高の頂点にある天皇を初めとして財閥も官僚も戦争の責任をとらなかったのです。戦後も生き続けたのです。これは、完全に国家体制が粉砕されて、占領軍の軍政が行なわれてきた中から戦後生まれてきたドイツと大いに違うところです。
 大体、アメリカ軍は、日本の占領をスムーズに行なう都合上、天皇を戦犯にしなかった。さらに、日本の政府機構、官僚機構をそっくりそのまま使って、いわゆる間接統治をおこなった。戦争中、国民に号令をかけた人々が戦後もそのまま残っている。ただ言うことを変えただけで、戦後も残ってきた。だから戦争中に悪いことをした、戦前に間違ったことをしたと言わない、言えないんです。
 ですから、戦争は侵略戦争だった、その中で日本軍は残虐行為をしたということを教科書に書かせない、書いたら検定で削ってしまうということをズーッとやってきたんです。しかし、それでいいんだろうか。今、アジア各国で問題にされているのは、実は日本が戦争の責任をきちんと総括しない、していないということなんです。 
 今まで中国の問題を申し上げましたが、中国だけではないですね。それは朝鮮でもそう、東南アジア各国でもそうです。一九四一年以降、日本は対米英両戦争を始めました。これは実は日中戦争の延長線上にある戦争であります。その戦争の中でも残虐行為を繰り返した。真珠湾の不意討ちが問題になっていますが……‥これも最近新聞で書かれることですが、真珠湾攻撃よりももっと早く、マレーの上陸を一時間半前にやっている。しかも、イギリスに対してはアメリカに対するように事前の交渉さえしていない、全くの不意討ちをしている。そして、その中でたくさんの捕虜を得た。その捕虜を、例えば、泰緬鉄道工場にこき使ったり、たくさんの死亡者を出している、さらにマレーシアや、シンガポール、これは人口の半ばが中国系です。日本軍は中国で行なったのと同じような大虐殺をマレーシアやシンガポールの中国系住民に対して行ないました。フィリピンでもそうです。そういうことが行なわれたのですが、そのことをきちんと総括していない。その責任を明らかにしていないのであります。そして、むしろ逆に、右翼ジャーナリズムを使って、「日本人でありながら、日本の歴史に汚点を塗るようなことを騒ぎ立てている。自分の国を悪く言うようなことが、いったい果して日本人のやることか」といったような攻撃が、戦争の歴史や日本軍の残虐行為の歴史を研究する者に対してかけられてくる訳です。
  私は、たまたま戦争の歴史を専門にして、何冊も本を書いてきましたが、書き出した頃から、脅迫状(私の秘書は、先生に対するファンレターだって言うんですが)がたくさんやって来ました。最近では、毎晩毎晩、この半年ぐらいぶっ続けに、夜中に無言電話がかかって来るというようなことで、随分迷惑を受けてるんですが、そういう雰囲気があるわけですね。中には『全貌」 という右翼の雑誌は、私の顔写真と電話番号と住所を載っけて、「南京虐殺をでっち上げて宣伝している奴だから、ここに厳重に抗議しろ」という記事を載っけたんで、それから電話がかかってくるようになったんですが、そういうようなことが存在する社会情勢があるわけですね。これは、非常に問題だと思うんです。それを直さなければ、そして、そういう事実をはっきりさせなければ、同じことをまた繰り返すかも知れない。
 日本には、そういう歴史に対するきちんとした反省がない。また、反省をするような、批判をするような歴史を普及させないようにしようとする企てが盛んに行なわれているということは、問題であります。
 つまり、日本は、侵略戦争をした。侵略戦争の加害者であったという加害の認識を国民的に持たなければならない。国民的に受容しなければならないということが、何よりも大切だと思うのであります。そして、こういうことがなぜ起こったのかという基本的な問題点を、われわれははっきり認識しなければなりません。最初にちょっと申し上げましたように、日本という国が、社会が、国民の人権と自由をきちんと尊重して来なかった。民主主義と自由の政治化が十分じゃなかった。そういった社会であればこそ、軍隊がすぐ抑圧移譲の行為に走る。残虐行為に走るような体質を持っていたと言うことができます。
(後半部分を追加。以上、引用終わり)
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1992年の出版だが、状況は悪化している。A級戦犯岸信介の孫、安倍を総理に据える日本国民の民度では、侵略戦争への総括などありえないのだろうか。戦後70年の本年、これもまた戦前と変わらない体制のマスコミが日本軍の侵略戦争での犯罪行為に迫ることもほとんど期待できないので、せめてこのブログで積極的に取り上げていきたい。