【独自第3弾】陸自部隊、身分隠し情報収集か 開示程度4段階で運用 国内有識者ら対象 愛国心など調査,熊日7.24

熊本日日新聞 2026年7月24日 18:00
陸上自衛隊中央情報隊(東京・埼玉、朝霞駐屯地)の対外情報部門「現地情報隊」が、日本人の大学教授ら市民を対象に「愛国心」や「異性関係」といった個人情報を組織的に調査・収集しているとされる問題で、隊員が身分を隠して対象者に接触する人的情報収集活動(ヒューミント)が、部隊内で承認されていたとみられることが24日、元隊員らへの取材で分かった。本来は海外での情報活動を任務とする部隊が、秘密裏に国内の有識者らに接触して情報収集していた可能性がある。

 熊本日日新聞が入手した資料や関係者の証言によると、現地情報隊は、隊員が対象者に接触する場合に身分の開示程度を4段階に分けた独自の運用を規定。レベル1からレベル4まであり、1では情報隊員であることや公務での接触であることを明かす一方、4では自衛隊員としての身分を完全に隠して対象者に近づくよう指示されていた。

 対象者への接触計画が詳細に書かれた「継続接触伺」という文書には「身分開示」の項目があり、4段階のうちどのレベルで接触するかが示されていた。文書には、対象者への接触の経過が克明に記録された上、隊長や班長の決裁印が押されていた。

 元隊員は「自衛隊員であると分かると会ってもらえない人もいる。身分を完全に偽ることはないが、積極的には明かさないことが普通だった。民間の集会などに潜入したり、偶然を装って接触したりして関係を構築して、個人情報を抜いていた」と証言した。

 元隊員などによると、調査対象は、海外の政治や社会情勢、安全保障に精通した国内の大学教授やNPO法人代表、市民ら。隊員が日常的に接触し、情報源としての利用価値や、国や自衛隊に対する心情を判断していた。集めた情報は報告書にまとめ、部隊のある朝霞駐屯地で保管しているという。

 調査対象にされた大学教授の1人は熊日の取材に「自衛隊員と会った記憶自体がなく、どこでどのように情報が取られたのか全く分からない」と困惑。別の教授も「情報収集への同意など一切していない」と話した。

 東京都立大の木村草太教授(憲法学)は「身分を隠し、あるいは虚偽の目的を告げて個人情報を収集してデータベース化したとすれば、問題だ。収集された情報が差別的な評価・決定に使われる可能性もある」と指摘。さらに「行政機関の長等は、偽りその他不正な手段により個人情報を取得してはならない」とする個人情報保護法違反に当たり得るとし、「秘密裏に情報を収集されることで、(対象者)本人が権利侵害を訴えることすら困難になる点も問題だ」と話した。(植木泰士、小山智史、迫田真帆)
熊本日日新聞が入手した資料。レベルによって、調査対象者に自分の身分をどこまで明かすか詳細に指示されている。レベル4ではほとんどの情報を「隠す」「ぼかす」としている