タブー無き第四権力、新しい日刊新聞のために2(本多勝一さんの日刊新聞構想)
こんな新聞読みたくなりませんか。週刊金曜日発刊前の本多勝一さんの文です。
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ジャーナリスト党宣言 - タブーなき第四権力、新しい日刊新聞のために
(1) いわば高質紙(クオリティー=ペーパー)として週に五日発行。夕刊なし。休刊は日・月の二日。ブランケット版(現行の一般紙と同じ)で当面は12ページだて。
(2) 土曜または日曜に特別版(いわゆる日曜版に相当)を発行するが、これは従来の常識的日曜版とは全く異なり、総合雑誌や週刊ニュース雑誌の役割を果たすほか、重要な記録を網羅的に収録し、当面は30~50ページだて。
(3) 原則として宅配を考える。したがって創刊段階で宅配可能な地域以外は当面郵送となる。
(4) 経営の独立堅持のため一種の会員制とし、創刊時の全読者に株主になっていただく。一株五万円(商法第一六六条ノ二による)とし、創刊時読者(株主)は半年間の購読料を無料に。読者(株主)数を五万人確保できた時点で創刊開始とする。影響力をもつメディアとしての安定部数の目標は三〇万部。一定限度内で多数の株を一人が持つことも可能なので、五万人は五万部に相当するが、株数はもっと多くなって約三〇億円の見込み。利潤があれば株主の購読料を半年単位で値下げしてゆく。
(5) 一般紙面の編集方針は、一切のタブーを排するために結果として政党的中立となる。 「中立」 はしたがって、現行マスメディアのような消極的(いわゆる 「左」 「右」 を排除した)中立ではなく、積極的(それらをとりこんだ)中立となろう。日本の宿痾(しゅくあ)となった官僚主義(官権)との対決をはじめ、特に環境問題と人権問題を重視する。関連して裁判批判にも重点をおく。
(6) 一般の雑報ニュースは通信社のものを全面的に採用し、自社のスタッフ記者は全員が独自の署名記事だけを書く。したがって雑報を争う記者は必要とせず、たとえば 『朝日新聞』 でいうなら編集委員クラスだけによる少数精鋭主義をとる。大学新卒の記者は当面採用せず、実績ある中堅以上のジャーナリスト集団とする。
(7) 紙面整理には、たとえば現行新聞のようなページごとの独立性をやめて外国紙のように 「○○ページにつづく」 方式を採用するなど大幅な改革をすすめ、 「社会部」 「政治部」 といったセクショナリズムを制度的に廃する。
(8) 電波メディアはもちろん、活字メディアにしても、他の新聞・雑誌が報じた重要な特ダネは 「○○新聞によると」 として紹介し、記録を重視する。
(9) フリーのライター・写真家・知識人に多くの紙面を提供し、また稿料を高額にしてすぐれたフリーを育てる。
(10) 外国情報に力を入れ、アジアを始め第三世界の声を重視して、それぞれの専門家などにほぼ定期的に寄稿していただく。
(11) 音楽・演劇・絵画・ルポルタージュそのほか広範囲の文化を重視、旧来の小説偏重を是正してゆく。
(12) 各種の市民運動やネットワークを重視し、その情報・動向・交流等をきめこまかく報ずる。外国の市民運動やNGO活動の類も広く伝える。
(13) テレビ・ラジオ欄は、単なる番組紹介にとどまらず、批判的視点を大幅にとり入れてゆく。一般にメディア批判や 「ニュースの裏側」 的記事を重視する。スポーツ関係も同様。
(14) マスメディアにおける反論権の確立をめざすべく、反論文の掲載を重視するほか論争(ディベート)を慫慂(しょうよう)し、盛んにする。本紙の記事や評論に対する反論・再反論等はもちろん、他紙誌によって捏造・改竄・プライバシー侵害等による被害を受けた側に対しても、正当な反論であれば紙面を提供して 「マスコミ公害」 と戦う。
(15) 日曜版(または土曜版)には、長編ルポ・長編論文のほか、講演・講義でも重要なものは収録する。書評も重視して、ときには一冊の本に全ページをついやすような論評も掲載し、稿料も相応に高額にする。
(16) スタッフ記者による署名記事は、各専門分野や独自の視点による記事を中心に、記録性・解説性・歴史性を重視し、大きな事件などについては随時「解説的要約」を掲載し、社外筆者にも多く登場していただく。
(17) 読者(株主)の意見を最大限に尊重すべく、投稿ページに質・量とも高い比重をおく。
(18) 広告はむろん掲載するものの、経営上の比重としては過分な重きをおかない。
(19) スタッフ記者の中の10人前後を編集委員とし、これに業務関係役員数人を加えて最高決定機関とする。社長はその権限を代行する。
以上はほんの 「叩き台のための叩き台」 にすぎない。 「本番の叩き台」 のためには、さらに多くのジャーナリストや有識者ら広範囲のブレーンからご意見を求めるほか、 『ハンギョレ』 そのほか外国の新聞も取材して参考にする。
そこで、前述の 「本当に実現する段階にもし到った場合にご協力あるいはご支援をお願いすぺく、そのための」 つまり 「本格的お願いの前段のお願い」 として、本誌読者を含む多くの方々に以下のような呼びかけをしたい。
このような日刊紙を、もし創刊可能な条件がととのった暁には、ひろく購読者(すなわち株主)を募り、五万人に達した段階で刊行にふみきる。そのように募るときに直接お便りで要項をお知らせしたいので、購読ご希望の方々(すなわち株主予定者)は次の宛先へ往復ハガキで住所氏名(郵便番号とも)、電話番号を ” 登録 ” していただけたら有り難い。
<文庫収録にあたって> 『朝日ジャーナル』 発表当時の原文では、ここに ” 登録 ” さきの日刊新聞創刊準備委員会の仮住所と関係事項、創刊断念の場合の通知方法などが示されていました。しかし日刊新聞は配達問題が最大の障害となってまだ進展をみないので、この部分を削除します。進展があって創刊が決まれば、主要日刊紙の大型広告などでお知らせすることになりましょう。
このような大計画は、いうまでもなく私一人で考えているのではない。強い意志と実力を備えた個性を、少なくとも数人は必要とする。またこうした性格の新聞は、もはや読者(株主)以外にいかなるスポンサーもタブーもなく、またスタッフ記者は真の意味でのジャーナリストにふさわしい理念を信条とする者に限られる。その人々を 「党」 に類する集団としてみるならば、なかば冗談もこめてにせよ、 「ジャーナリスト党 (*4)」 とか 「かわら版党」 とか呼ぶこともできるではなかろうか。
*このコラム 「貧困なる精神」 も、今週号の二〇八回をもって、本誌休刊とともに不本意ながら終わります。この連載に対する 内外の ” 圧力 ” がありながらここまで続けてこられたのは、ひとえに読者の圧倒的支持があったからこそにほかなりません。それなしには ” 圧力 ” にも耐えきれなかったでしょう。数々の御激励のお便りにいちいち返信を書く余裕はありませんでしたが、この場をかりて心からお礼を申し上げます。長いあいだ本当にありがとうございました。記者冥利につきる光栄です。思えば本誌創刊から休刊までの三三年間は、そのまま私の新聞記者生活(朝日入社から退職まで)のそれでした。
「貧困なる精神」 シリーズの 「場」 がなくなることを ” 祝福 ” してくれている勢力もありましょうが、残念ながらそれは空しいことになると思います。この 「貧困なる精神」 という看板は、最初はミニコミの 『エイムズ』 、次いで月刊誌 『潮』 、並行して同 『家庭画報』 、そのあとが本誌でしたから、四誌にわたって書きつがれてきたわけです。実はすでに来週から五誌目として 『サンデー毎日』 に引っ越して登場することに決まっています。
それでは 『朝日ジャーナル』 の読者だった皆さん、さようなら。
( 『朝日ジャーナル』 1992年5月29日=終刊号)
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以上は「本多勝一を応援する読者会のページ」HPより引用です。


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