ICパスポートの気になる中身 週刊金曜日2005.11.11

2025年9月15日

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すべては監視社会をつくるため 樫田秀樹
 日本では今年四月一三日、市民団体「ネットワーク反監視プロジェクト」が、「プライバシー侵害を引き起こす危険性がある。ICパスポートは米国の外圧を受けたものに過ぎず、自国民のプライバシーが国境を越えて外国政府に管理される」と反対表明をした。昨年三月には、四一の国際NGOが同様の理由で共同声明を発表した。
ーすべては9月11日から
米国は〇二年五月、不審者の入国を阻むため「国境警備強化及び査証入国改正法」を成立させた。米国とビザ免除プログラムを結ぶ二七カ国からの入国者が、顔画像、指紋、虹彩(瞳孔を囲む輪状の膜。色素によって茶眼、青眼などになる)などの生体情報を搭載したICパスポートを不所持の場合、入国を拒否できる法律だ。運用は来年一〇月から。(略)
「このパスポートに込められた顔写真の個人情報は、政府の管理が個人全体に及ぶ最初の最もコアになるもの。-わが国の憲法において政府がそこまで個人情報を把握する憲法的根拠はどこにあるのか?」そして、町村大臣はこう答えたのだ -「私もよくわかりません」。「大臣があの程度です。また、与党も野党も、人権やプライバシーに問して、国会できちんと論議しないまま可決してしまいました」
 いわんや、この膨大な個人情報をどの省庁が管理するのかすら私たちは知らない。パスポートを発行する外務省か、法務省か、警察庁か?外務省旅券課に問い質してみたが、「多方面で議論した上で取扱いを検討したい」という曖昧な回答しか得られなかった。
ー監視カメラとの連動はすでに始まっている
この技術はどう活用されるのかと尋ねてみた。担当者は、あくまでも私的な予想ですがと前置きしてこう話してくれた。「大きな利用は警察です。監視カメラと連動したコンピュータが手配犯
や不法就労者などの顔を認識すると、自動的に居場所を知らせます。また、犯罪歴のある人の名前を入力すると、その人が映っている映像が過去に遡ってザザザと出てきます。技術的にはあと数年です」
 そして、この原稿を書いている一〇月一六日、『朝日新聞』にそれを裏付けるような記事が報道された。㈱運輸政策研究機構が来春から東京都内での地下鉄駅で、改札を通過する客すべてをカメラで撮影し、顔認識データと照合する実験を行なうというものだ。オブザーバーの一つとして警察庁も参加する。
今後、サングラスやマスクの着用、斜めからの撮影でも本人と合致できるよう実験を詰めていくとのことだった。
 次は「指紋」導入か?
だが、監視カメラが記録する私たちの映像は、親しい異性との会話であったり、鼻をほじっている場面であるかもしれない。私たちの日常が何の合意もなく監祝されることを国は、そして国民はどう考えるのか。
ーほかにもある監視法案
サイバー取り締まり法案
 近年増え続けるインター/ネット犯罪を取り締まるため二〇○一年、欧州評議会は「サイバー犯罪条約」を採択した。だが、日本がこの条約を批准するためには、国内法を整備しなければならない。その場合、次の二つを法に盛り込む必要がある。
①警察がリアルタイムで通信履歴を収集できること、②重要犯罪では警察はリアルタイムでインターネット通信を傍受できること。
 もし国内法が成立すると今後警察は「任意で」プロバイダーに通信履歴の保全を要請できる。これは恐ろしいことだ。なぜなら「強制」捜査なら、警察は裁判所から令状を取らねばならないが、任意ならその必要がなくなるからだ。そして、警察の「任意」を拒絶できるプロバイダーはほとんどいない。
 実施状況として、法務省は「おとり捜査、通信傍受等の活用方策について検討を行っている」「共謀罪を継続審議とした」、警察庁は「都道府県警察におけるサイバー犯罪捜査を技術的に支援する全国的な体制を整備する」「顔認証技術の犯罪捜査への活用を推進」などの文字が並ぶ。
 どれも、私たちが知らない間に次々と決められている。

img308.jpg共謀罪ーこのグロテスクな権力テクノロジー 宮本弘典
かくして近代国家の刑法は、犯罪結果が生じた場合を処罰する既遂処罰を原則とし、重大な犯罪についてのみ未遂処罰を認める。犯罪の実行に至らない予備や陰謀の段階での処罰はさらにその例外中の例外だ。だとすれば、犯罪の相談や合意それ自体=共謀を処罰の対象とし、それを根拠とする市民生活領域への警察的介入の詐容は、近代刑法原理のあからさまな放棄を意味する。同時に、自由主義的法治国家原則を逸脱するこうした暴力(刑罰権力/警察力)の行使は、権力による政治支配の正競化の放棄でもあるはずだ

市民社会は本来、自由に基づく自己統治を基調とするが、共謀罪は、この市民社会を警察による管理・統制の下におき、権力による暴力的介入を日常化・全面化するからだ。

立法の必要性を基礎付ける国内的な事情(立法事実)は完全に度外視されている。共謀罪の新設がどれはど有効であるかば「今後の問題」であり、「まずもってつくるということが必要」(法制審議会議事録)だというのである。ガイアツを口実として、国家の暴力である刑罰権を、「厳格かつ明白に必要」な刑罰法令のみの許容という拘束から解き放とうというわけだ

ー少数意見が射殺される
 反戦ビラの頒布に対する住居侵入罪、公衆トイレへの反戦落書きに対する建造物損壊罪、勤務時間外の公務員による政党ビラ配布に対する「政治行為」禁止を理由とする国家公務員法の適用など、「組織犯罪」とは無縁な、むしろ基本的人権の行使に対する刑事規制=暴力的介入は、もはや日常化している。

 「安全」の内実は無限定であり、その定義は常に多数派が行なう。既存の日常的秩序を疑問視する者、否定する者は、安全に対する危機因子として、彼らの不安・憎悪の対象となる。そうした者は多数者にとって「社会の敵・国内の敵」であり、常に監視・統制・排除・賎減の対象とされ、リスク管理・予防が強調される。

 悪名高さ治安維持法は、テロルによる「国体」護持の権力テクノロジーにはかならなかった。そして「国体」の概念が曖昧・不明確なればこそ、その否定に対して、広範かつ苛烈きわまりない徹底的な弾圧手段として機能した。共謀罪が「安全」保持のテクノロジーだというとき、それが「現代版治安維持法」に転化するおそれは、決して杷憂ではない。
ー目と目が合えば「共謀」?
したがって、従来の判例にいう「共謀」が「共謀罪」に格上げされるわけだが、判例における「共謀」概念はそれこそ無限定であり、その認定方法もきわめて緩やかだ。まず、共謀とは明示の慧思表示や意思連絡も要せず、犯行の具体的な計画・立案の相談の事実も要しない(黙示の共謀)。阿畔の呼吸、目と目が合えば「共謀」なのだ。
法案では、条約と異なり、共謀罪処罰に関して「越境的犯罪組織」という要件を意図的に欠落させている。かくして、無限定な共謀概念とその証明方法により、ありとあらゆる「団体」が捕捉対象とされることになる。

img317.jpg鹿砦社社長「逮捕・長期勾留」 理由=名誉棄損、目的=権力の言論介入 小谷洋介
 今回の逮捕劇は「司法におり言論介入」の前例づくりだったという見方ができるのではないか。
ーー(引用終わり)著作権は週刊金曜日にあります。)
この手の治安立法は小さく生んで、大きく育てるものだと、読んだことがある。治安維持法のように改悪するのが最終目標だ!