報道されない「暴走する公安警察」週刊金曜日2005.4.1

2025年9月15日

img662.jpg
魚住 最近、反戦ビラや「日の丸・君が代」反対のビラを配った人たちが公安警察に逮捕されるケースが相次いでいます。昨年二月、東京・立川の防衛庁官舎でビラ配りした人たちが逮捕された(注1)のがその典型ですが、ちょっと前なら考えられないような異常事態です。どうして公安警察はこんなことをやりだしたんでしょうか。
C:警察が組織に対する強制捜査に「ビラ配り」を使ったのは、JR東労組の事件(注2)から
です。一〇〇人ほどの捜査員がガサ入れに入りました。その時、取材している記者は「住居侵入」でそんな大けさな捜査をするのかと疑問を持っていましたが、世間的には批判がなかった。それから手法として定着したのでしょう。一九九八年頃からピンクビラの配布、印刷に関する逮捕で、相次いで有罪判決が出ました。こう言った動きも公安の動きを後押しする背景になったと思います。
-平和運動への見せしめ
魚住 先日、検察庁の元高官にどうして「ビラ配り逮捕」が相次ぐようになったんですかと尋ねてみたんです。はっきりした答えは返ってこなかったんですが、「あれは検察がやらせているわけではない」とその元高官は言ってました。汚職などの知能犯事件を警察が扱った場合は検察に
起訴してもらえをいと大変だから検察の言うことを聞くけど、公安事件の場合は警察は検察の言うことをあまり聞かないんだそうですね。それともう一点、オウム事件で信者が他人の駐車場に入っただけで逮捕されるといったケースが続いて、「あれ以来、微罪逮捕の傾向が強くなったんだ」とも言ってました。
C:検察の人間がビラ配り裁判ばかりやらされるのもたまったものではない、とこぼしていると聞きますけどね。立川の件はイラクへの自衛隊派遣直前のことですから、「平和運動をするとこういう日にあうぞ」という明らかな見せしめでしょう。
 政治のための事件つくり
魚住 北朝鮮といえば、当時官房副長官だった安倍晋三氏が拉致問題で一躍注目されるようになりましたが、彼が公安情報に清適しているという噂をよく聞くんですが。
C 北朝鮮絡みの事件捜査の官邸側の窓口は安倍氏でしたね。あの当時は警察の捜査情報を社会部の警察担当よりも、政治部の記者が先に知っていました。だから公安事件に強いはずの『産経新聞』が民放に抜かれたりしていた。それも小泉政権が朝鮮問題で点数を稼げなくなったと思ったのか、最近は北朝鮮絡みの事件はぷっつりとなくなりましたけどね。
B 確かに安倍氏が官房副長官を辞めてからなくなりましたね。
魚住 つまり、公安警察と安倍官房副長官の思惑や利害関係が結びついていたということですか。
A そうですね。昨年の八月に日朝交渉はこれ以上進まないだろうと、飯島勲政務秘書官が話していたという情報が出回りました。9・17直後は朝鮮総連を悪者にしていれば世論の支持を得られると思っていたけど、もう使えなくなったのでしょう。
魚住 公安警察と政治の結びつきは想像以上に強いようですね。
C それどころか、公安は自らの存在意義を示すためにも事件を作りますからね。特に今は、公安の監視対象の「過激派」なり、「外国人テロ組織」側に動きがないから余計に一所懸命になって事件を作ってますね。「ビラ配り逮捕」がその典型でしょうけど。
C 公安警察も法務省管轄の公安調査庁もこれから食べていけるネタは国際テロですからね。
魚住 公安調査庁と公安警察の関係はどうなんですか? 依然として仲がよくないんですかね。
A 対象者がかぶるのでお互いが邪魔でしょうね。公安調査庁は人員は少ないがお金はある、公安警察はその逆。警察が三、四年かかって育てたスパイを、公安庁がお金を積んで横取りしてしまってトラブったという話も聞きますよ(笑)。
魚住 それでは、公安警察とマスコミの関係はどうですか。新聞やテレビの報道ぶりを見ると、特にフジテレビや『産経新聞』と公安の関係が良好のように思えるんですが。
C 公安の広報媒体みたいなものですよ。例えば「IR労組に革マルがいる」なんていう記事はフレームアップがすごすぎて普通は書けないけど、フジテレビや『産経新聞』は平気でやりますからね。
魚住 NHKは?
A あそこは外部からのクレームに弱いからあまり流せないみたいです(笑)。
B 公安はたまに共同通信も使いますね。通信社は性質上、時間に関係なくどんどん報道しますから使い勝手がいいんでしょう。一連のアルカイダ関係先逮捕の報道も初報は共同通信ですよ。
A 内部の話によると、共同はその特ダネを新聞協会賞候補としてエントリーしようとしたらしいですよ。
 「捜査こそが一罰百戒」
ところで公安警察の捜査能力はどうでしょうか。昨年七月、国松長官銃撃事件でオウムの現・元信者四人が逮捕されて、結局不起訴になった件なんかを見ていると、相当落ちているような気がするんですが。
C やはり、六〇年代、七〇年代は内ゲバで人が死んだり、迎賓館に爆弾が仕掛けられたり、デモがあったり、捜査対象に動きがありましたからね。今はそれがない。捜査経験は積めないでしょう。
A それでも彼らは優秀な警察官なんですよ。警察学校で成績の良い人が公安部に入りますから。
B 警察内で出世もしやすいですよね。刑事部は忙しくて昇級試験の勉強ができないけど、公安部はヒマだからそれができます。歴代警察庁長官で公安出身でない人は一人か二人くらいのはずですよ。
c 優等生だから政権の機嫌の取り方もわかっている。
C 公安部の人間は捜査そのものが一罰百戒だと真顔で言いますからね。特高警察以来の性質でしょう。横浜事件(注6)のように六〇年後に再審になっても、そんなことは彼らにとってはどうでもいいことなのです。見せしめにするのが捜査の日的。それとなんら変わりませんね。「人質事
件」にしても活字で「革マル」だと書かれてしまうと、イメージが定着して拭えなくなりますからね。
魚住 ところで国松長官狙撃事件の捜査は、なんであんなお粗末な結果になったんですか。
C さあ……。公安部の全員が、犯人は平田信でなければいいと思っていたことば間違いない。だって平田だと探さないといけないから、その思いの結実でしょう(笑)。
魚住 警察内部ではあの事件はどう評価されているんですか。
A 内部でも意見はいろいろあって、外事の人は「大失敗」という。公安一課の人間は、何はともあれ事件として表に出して、オウム真理教と犯行を結びつかせたことで、目的を達成したのだ、起訴、有罪判決なんかどうでもいい、と。つまりイメージプロパガンダとして役割を果たせたという評価をしています。
C 当局側にとってはメディア操作は簡単ですからね。どこかの社に多めに情報を流せば他社は焦る。
B あとは『朝日新聞』に情報を流しでも扱いが小さくなるだろうけど『産経新聞』なら書くだろうとかそういう計算もあるでしょうしね。
魚住 警察に批判的な記事を書くのは難しい?
A そういう社の記者は嫌味を言われたり、時には情報を流してもらえないこともありますね。
それにしても、たとえば「ビラ配り逮捕」の件は朝日新聞が社説で批判をしていましたが、第一報は横並びですからね。『産経』やフジテレビと同罪でしょう。
魚住 そう。本来ならマスコミが官僚組織の暴走を食い止めなければいけないのだけど、マスコミも機能不全を起こしていて、その役割を果たしていない。官僚組織の暴走という意味では戦前の日本がそうでした。あの時は陸軍の中堅幕僚たちがいろんな局面で暴走するのを上層部が止
めることができずに戦争になだれ込んでいった。もしかしたらそれと同じような状況に陥っているのではないのでしょうか。何とかしなければ大変なことになると思います。
img721.jpgimg692.jpg
市民の運動が今狙われる 成澤宗男
無差別に襲いかかる「現代の特高」たち
昨年起きた東京都立川市での自衛隊官舎ビラ撒き逮捕事件のように、公安警察による市民運動への弾圧や参加者への嫌がらせが目立っている。外部のチェックもないまま好き放題を繰り返す公安こそ、民主主義を根底から崩している社会の敵だ。

 「お前ら黒へルグループは一年以内にぶっ潰してやる」「実家から籍を抜いて活動家の養子になれ」「写メールとってバラ撒いてやるよ」「母親は狂い死に、お前は結婚も仕事もうまくいかず野垂れ死にだぞ」「転向しろ。面倒は見てやるから」-。
これは昨年七月四日、市民団体のワールド・ピース・ナウが参議院選挙を前に、「渋谷〜平和のための投票を」と題して東京都内をデモ行進していた際、理由もなく横動隊に暴行されて逮捕されたアルバイターのAさんが、警視庁公安二課の刑事から渋谷署で浴びせられた暴言の一部だ。
この日、文字通り「平和」に行進していた参加者を、重装備の機動隊員がプラスチックの盾で小突くなど執拗に暴行を加えた。たまりかねた参加者の友人の一人が抗議したら、いきなり逮捕。止めに入ったAさんも、巻き込まれて逮捕された。これで「公務執行妨害」という逮捕理由になるのだから恐ろしいが、警視庁は「逮捕者は黒ヘルグループ」などとありもしないデマをマスコミ
に発表。現行犯逮捕なのにもかかわらず、六日後にはAさんをはじめ三人の逮捕者宅とワールド・ピース・ナウの事務所を家宅捜索した。
「狙いは、運動潰しの嫌がらせですよ。とにかく暴力で挑発して逮捕し、本来必要もないはずの家宅捜索に入る。警官が大挙してやってきたら家族や近所の人たちは何事が起こった
 デタラメな家宅捜索
ここ数年、こうした逮捕事件を典型に、市民運動への公安警察の介入や弾圧が目立つ。昨年二月、東京都立川市の自衛隊官舎にピーラを撒いた「立川テント村」のメンバー三人が逮捕されたのもその現れだろう。
 この事件で警視庁公安二課は総勢六〇人以上を動員し、「テント村」の事務所や逮捕者宅など六カ所を家宅捜索。そこではパソコンがすべて開けられ、名簿をはじめ運動に関連するものが根こそで押収された。
 昨年八月一〇日の朝、市民団体「とめよう戦争への道!百万人署名運動」の東京都内のビルにある事務所に、突然警視庁公安一課の家宅捜索が入った。容疑は、二〇〇二年一一月に千葉県で起きたまったく身に覚えのない「ゲリラ放火事件」という。
 開けた途端、私服の公安が一七人も狭い事務所になだれ込み、片っ端から机の上や中を引っくり返し始めた。デスクトップの四台のパソコンも、中のデータをあきられた。結局、押収していったのはメモ用紙やパンフレットなど数点。「また来るからな」などとヤクザ口調で捨て台詞を残し公安が立ち去った後、事務所の中はメチャクチャになっていた。

「関係ねえんだよ」
「もともと公安は、思想警察です。社会的な反対勢力が弱くなった今だからこそやりたいようにやり、戦争に反対するのは〝非国民〞とばかり根こそぎ潰しにかかる好機だと思っている」と指
摘するのは、評論家で、反戦運動の情報を掲載するミニコミ紙『派兵チェック』編集委員会の天野恵一氏だ。「しかも権力には安倍晋三のような右翼政治家が居座り、警視庁を管轄する都の知事は極右の石原慎太郎ですよ。こうした時代状況を、公安は敏感に読んでいるのです」
今年三月の都立高校の卒業式でも、公安の姿が目立った。確認されただけでも二つの高校の校門前で「〝日の丸・君が代〞強制反対」のビラを配布していた市民が三人逮捕されている。また一人が昭島署に連行された都立拝島高校では、同校の副校長が、事前に「このようなビラまきに対しては、校長の判断で所轄署に連絡することになっている。公安が来る」などと脅している。

右翼を育てている公安の実態 鈴木邦男
以前街宣車で、他の右翼と一緒に何十台も連ね、赤信号を連ね走ってたことがありました。それを見て、交番から馨宮が、「赤信号だぞ」と注意したら、後ろから公安の刑事が飛んできて「馬鹿野郎!これは俺たちが面倒を見ているんだ」と怒鳴っていたのを目撃したことがあります。これは一例ですが、公安と右翼は伸蘭意識みたいなものを共有しているのは事実ですね。
 ちょっと前になりますが、私は公安から「鈴木さん、書いてばかりいないで行動しなくちゃ。寸前で止めますから、日教組に、でも突入したらどうですか。行動力があると評価されますよ」などと言われたごとがある。彼らはそこそこ右翼がらみの事件がないと存在価値がなくなりますから、こうやって「男になれますよ」とか「右翼なんだから行動しなくちゃ」と吹き宅んで事件を起こさせるんです。
 僕に言わせれば、公安こそが治安を乱しているんです。僕はこのような組織は、もう不要だと思う。

ビラ配布で公安が10カ月密着 糟谷廣一郎
 社会保険庁職員を張り込み・尾行・盗掘…・・逮捕・起訴
昨年三月三日の逮捕の直後、六カ所の家宅捜索を行なった際に、日本共産党の後援会名簿や区議の手帳類をごっそり押収していることからも明らかなように、公安警察の目的は国公法違反に名を借りた特定の政党・団体弾圧だったと断定できよう。
今回の「事件」は公務員である堀越さんだけを被告人としているが、宣伝活動を依頼すれば「教唆」、手伝えば「幇助」、一緒に計画すれば「共謀共同正犯」として誰しもが過剰捜査の″被害者〞になる可能性がある。もし有罪とされればこのような違法捜査が蔓延し、市民にとって大きな脅威を生むことになる。膨大な予算を使って、共産党、労働組合、民主団体を敵視し、監視す
ることをメシのタネにする公安警察の実態と、政府がいかに市民の政治活動を圧殺しようとしているかが浮かんでくる「事件」である。

公安警察こそ民主主義の敵だ 内田雅敏
また昨年一二月、東京都葛飾区のマンションで共産党のビラをポスティングしていた男性が現行犯逮捕されました。この件であるマスコミの記者が、東京地検の幹部に夜回りで話を聞いたら、
「あんなの、起訴できるわけがない。憲法違反だ。政党のビラだろう」と語ったと聞いて
います。ところが、時間はかかりましたが結局起訴されました。
 私は立川の事件の弁護を担当したのですが、公判があるたびに私服の公安が裁判所に大挙してやってきて、誰が傍聴にきたかをチェックしてい
る。一審で判決が出て勝訴した後の集会にも、彼らは二〇人ぐらいで監視していましたね。三月一九日に都内で開かれたイラクの反戦集会でも、会場の日比谷野外音楽堂の内側にまで溢れるほど公安がいて、参加者をチェックしていました。刑事警察が手薄とされる現状で、なぜここまで
して非暴力的な運動や集会を監視しようとするのか。
–(引用終わり、著作権は週刊金曜日にあります)
#共謀罪 が成立したら、公安がさらに狂暴になる。少しは暇な公安を刑事警察へを回せばよいのに・・。