天皇の軍隊と日中戦争 [著]藤原彰
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天皇の軍隊と日中戦争 [著]藤原彰
[掲載]2006年07月23日
[評者]赤澤史朗(立命館大学教授・日本近現代史)
■軍史料にこだわり責任を追及
本書は、軍事史家として知られた藤原彰の遺稿集である。藤原によれば、日中戦争における日本軍は、頻繁に中国人の家を焼く軍隊であった。家を焼かれた人々は難民化し、焼く行為はしばしば住民殺害を伴った。
戦争中の日本軍の記憶は、依然としてアジアと日本との間に横たわるトゲとして存在している。その日本軍の史料は、敗戦時にまとめて焼却された。そのため日本軍の戦争犯罪の様相は、被害者の証言以外の文書史料が少ない状況にある。しかし藤原は、あくまで日本軍の史料にこだわるのだった。彼は軍の「戦闘詳報」などの史料を用いて、南京事件での虐殺や、抗日ゲリラの根拠地を叩(たた)き住民を殺害した治安粛正作戦の背後に、軍の無責任な決定や命令があったことを追及していく。
その藤原は陸軍士官学校の出身で、若い下級指揮官として中国戦線を転戦し、戦後に大学に入り直して歴史家となった人物であった。本書のテーマも、アジア解放のはずの日本の戦争が、なぜ窮迫した中国人を生み出すのかという、中国戦線の中で芽生えた戦争への疑問から出発していた。彼はその晩年まで、自分の記憶の中にある軍という組織の責任問題と、格闘し続けたのであった。


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